章之進
「彦右衛門様、沼の亀山城から竜の口城落城の祝いの品が届きましたぞ。」
彦右衛門
「ほほう、亀山城といえば宇喜田直家殿が城主のはず。これはまた美味しそうな料理じゃのう。どら……。」
義左衛門
「御待ちくだされ。まずは章之進に与えましょう。今回の一番手柄にて。」
彦右衛門
「それもそうじゃ。ほれ、先に食え。」
章之進
「わーい、いただきまーす!…………ぐぐっ、ぐはぁ!!な、何じゃこりゃぁ(松田優作風に)!!!まっずー!!つーか、気分が悪くなってきたんすけど……。」
義左衛門
「やはり、毒入りでござったか。全く油断も隙もない……。」
章之進
「それはあんたじゃ!!それより早く助けてくれぇ。」
義左衛門
「ともあれ、この解毒剤を!これで次のターゲットが決まりましたな。直家は希代の策士にございますゆえ、油断はなりませんぞ!今回は彦右衛門殿に働いてもらわねば。」
彦右衛門
「なんかエグイ相手みたいね……。」
沼城城跡 右の山が本丸で左が二の丸。天守閣は岡山城の大納戸櫓に移築されたが、戦災で消失。

義左衛門
「さあ、着きましたぞ。これが亀山城にござる。深田と沼に囲まれた堅城にて、我らの軍勢では攻め落とすのは不可能。こちらも策を用いましょう。まずは、彦右衛門殿、あの城の側に茶亭を作って、この前の料理の御礼として直家めを招待するのです。」
彦右衛門
「よし、分かった。」
簡素な茶亭完成後、
直家
今度はお招きに預かり恐悦至極にござりまする。」
(こいつ毒で死なぬとは、なかなかやるな)
彦右衛門
(しれっとしおって、この野郎!)
「いやいや、この前の『美味しい』料理のお返しでござるよ。我ら、これからもここへ来て親しくさせて頂きたい。ついては、沼の城からの交通が不便でござろうから、仮の板橋なぞをひかれてはいかがかな?」
直家
「ふむ、この茶亭はわれらの親交の証ゆえ、それもよかろう。」
(板橋をかけて油断させ、城内に泊めて今度こそ討ち取ってくれる)
こうして板橋がかけられ、何度かの酒宴がなされた。
直家
「今日は日も暮れかけておるゆえ、彦右衛門殿は城内に泊まられてはいかがかな?」
彦右衛門
「そうさせて頂けるなら、城内にて酒宴の続きを致しましょうぞ。」
(よっしゃ、作戦成功)
直家
「ならばこちらへ、御家来衆はどうされますかな?」
(しめしめ作戦成功。お前らはお呼びじゃないからさっさと帰れ!)
義左衛門
「我らは主君同士の語らいには邪魔でござろうゆえ、帰らせて頂きましょう。明日、またお迎えに参りましょう。」
こうして、彦右衛門は城に止まり、夜は更けていった。
直家
「それではそろそろ寝所にいかれてはどうかな?。」
(寝所にて仕物(謀殺すること)にかけてくれる)
彦右衛門
「いやいや、直家殿こそ、早く休まれよ。私はまだ酔い足りぬゆえもう少し飲んでいとうござる。」
(さっさと寝ろよ、そしたら周りに伏せている兵を仮橋を使って引き入れるからよ!)
直家
「いやいやいや、彦右衛門は客でござる故、身体に何かあってもいかんしのう。」
(引いてたまるか、外れくじ!!)
彦右衛門
「いやいやいやいや、直家殿こそ早く寝なければ、お体に差し障りあろう。」
(絶対譲らんぞ、北方四島!!)
こうして、いやいや合戦は深更に及び……
彦右衛門
(これは埒があかんわ、ええ加減酔うてきたし、予て用意の睡眠薬を……)
「さあ、直家殿、もう一献!」
直家
「うむ、ではこれを飲んだら、御主ももう休まれよ。」ゴクゴク………ぐうううう。
彦右衛門
「よっしゃ、これでパシャッと暗撮成功!手強い相手じゃったわい。さて、城門を開けて手勢を引き入れるかのう。」
義左衛門
「おお、章之進よ、合図じゃ。参るぞ!」
章之進
「おお!!皆の者続け!!まずは西の丸を攻め撮るぞ!!」
義左衛門
「我らの隊は、本丸と二の丸を制圧するぞ!」
石段を登ると本丸跡には弁財天神社と宇喜田の旗が風になびいている

目出たくまたもや乗っ撮り成功!!
彦右衛門
「勝鬨じゃ!」
彦右衛門勢
「エイエイオー!!」
章之進
「ところで、彦右衛門様、お体の方は大丈夫ですか?」
彦右衛門
「うん、君と違って全く大丈夫!って、あら、なんか身体が痺れてきたぞ、むむむ!」
義左衛門
「やはり痺れ薬を使ってましたな。さあ、この解毒剤を!我らの睡眠薬の方が強力だったので、助かりました。彦右衛門殿は私の見込んだ通り、運が良い!」
彦右衛門
「あのう、チミ、この2回ほど、僕たちに危ない橋ばっかり渡らせてるよね……。」
義左衛門
「まあ、それもここまで。直家は備前東部の有力豪族にて、沼城を手に入れたからには多くの軍兵を養えましょう。これからは危ない目にも遭わずにすみましょうぞ。」
(多分ね)
<沼城>
永禄2年(1559年)、宇喜田直家は、主君浦上宗景の命で、自分の妻の父であった沼城城主中山信正を謀殺します。
まず、沼城の東に茶亭を作り、狩猟を催してはこの茶亭に立ち寄り、信正を招いて油断させました。その内、沼や深田を迂回するのが面倒になった信正は本丸から茶亭に仮の板橋をかけます。
そうして月日が過ぎたある日、城内に直家を泊めた信正は、深夜まで酒宴を催しました。
酒宴は深更に及び、信正が酔って寝所に行こうとするところを直家は後ろから斬り殺しました。その後、直家はすぐに城門を開け放ち、伏せておいた手勢を入れて一気に沼城を奪取してしまいました。直家の妻は、これにショックを受け、自害しました。
こうして妻と舅の命と引き換えに沼城を手に入れた直家は、ここを拠点に戦国大名としての基盤を固めていったのです。
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