日本の城  日本の城筈割りの兵衛
日本の城を写真にて攻め撮るのでござる。おかしな物語と共にいざゆかん戦国無双の城撮り名人の道!
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日本の城を攻め撮れ!ー城撮り物語ー

章之進
「まったく、何が『下痢の症状』じゃ。馬鹿にしくさって!ん、おお、あれは我が手の者ではないか!弓の試射を致しておるのか。」



「おお、章之進殿。お役目ご苦労でござる。して、参内の方は無事に済んだのでござるかな?」


章之進
「うむ、無事終わった。官位の沙汰もあったようじゃ。これからは朝廷を後盾にして戦うことができよう。それより、拙者にも弓の稽古をさせてくれ。」



「おお、ようござる。ささっ、どうぞ存分になされよ。」


章之進
「よ~し、あの的に当てればよいのじゃな。」

「えいっ!」


???
「右!」


章之進
「次じゃ、そらッ!」


???
「左!」


章之進
「誰じゃ?うるさいのう。次じゃ、ええいッ!」


???
「下!」


 こうして、章之進の射る矢の当たる位置をことごとく当ててしまう者がいた。最初は気にも留めなかった章之進だったが、全ての矢がその者の言った通りの位置に突き立つので、次第にイライラしてきた。


章之進
「おい、そこもとは何の故あって、さっきから我が弓の稽古の邪魔を致すのじゃ。拙者の矢筋を見極める程の者なれば、余程腕前に自信がおありであろう。一つ貴公の腕前の程を見せて頂きたいものじゃ。」

(少しでも外したら笑い者にしてくれるわ!)


榎本兵衛
「おお、これは失敬致した。拙者は美作の国の住人、榎本兵衛と申す者。今度、伊勢詣りのついでに、京に立ち寄ったる次第にござる。腕前を見せよとの仰せなれば、披露致し申そう。」


 そう言って、兵衛はまず普通の矢を取り、ひょうと放ったところ、矢は見事に的の中心を射抜いた。


章之進
「げッ!なんたる腕前!」


榎本兵衛
「これしきで驚いてもらっても困るのでな。」


 兵衛は次に鏑矢(先に高い音のする鏑の付いた矢。合戦の合図などに用いる。先には二股状の金具が付いている。)を取った。


榎本兵衛
「えいっ!」


 兵衛の放った鏑矢の先端は、先に放った矢の筈(弦にかけるための溝がついた矢のお尻の部分。)を捉え、瞬く間に先に放った矢を真っ二つに切り裂き、これまた的の中心に突き刺さった。


章之進
「な、なんじゃ、こいつ!なんたる腕前!戦国無双と申しても過言ではないぞ!」


榎本兵衛
「退屈しのぎになり申した。では御免!」


 そう言って、榎本兵衛は姿を消した。


章之進
 ぽけーッ

「いやー、凄かったねぇ。恐ろしいばかりの腕前。戦場で狙われたら命がなかったろうね。兵衛だけにひょえ~!


 集まってきていた群衆と彦右衛門軍の侍達は、アメリカザリガニのように後ろに引いていき、章之進1人がポツンと残されたのであった。


章之進
「………………。」






<榎本兵衛>


 美作弓削庄東山村の人。天正時代に地頭の榎本重成十世の孫として生を受け、慶長年間に死んだ伝説の弓の達人である。


 ある時、兵衛は、伊勢詣りをしたついでに諸方を見物して京都に辿り着いた。都大路を蓬髪異様の風体、背には菰に包んだ愛用の弓を負って歩き、名所旧跡を訪ねて三十三間堂に来た兵衛は、多くの侍が弓の試射をしているのに出会った。


 それを傍らで見物していた兵衛は、侍が弓を引いて放つ瞬間に、「今のは左、これは右、下、上……。」と逐一ぶつぶつと独り言をつぶやいていた。


 ところが、この独り言が全て的中する。侍達は心中大いに驚いたが、横で見て言い当てる様に段々腹が立ってきた。射る瞬間に横でぶつぶつ言われては、気になるのも無理は無い。予言が当たるとなれば、尚更腹が立つ。


 遂に一人の侍が兵衛の前に来て、「人の弓を評するのは弓に心得があるからであろう。貴公の腕前を見せて頂こう。」と詰め寄った。


 兵衛は得たりと立ち上がり、愛用の弓を取り出し先ず普通の矢を射た。矢は的の中央を射抜いた。次に、兵衛は鏑矢を射た。鏑矢は先に射た矢の筈を捉え、筈から先の矢を真っ二つに割って的に命中した。


 周りの者はあっけにとられ、感嘆の声さえ出なかった。


 この事件は瞬く間に京の町の話題をさらった。ある物好きが、兵衛の筈を射る姿を絵師に描かせ、「筈割りの兵衛」と題して三十三間堂に奉納した。郷里の人は、上京した際、必ずこの額を見て帰郷したそうである。


 兵衛は武運には恵まれず、郷里で一生を終えた。美作に残る伝説である。






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